リースバックとは、企業が所有する資産を、リース会社に売却し、その後リース会社から再びリースを受ける取引のことを指します。企業は資産を売却することで資金を調達しつつ、引き続き資産を使用することができるというメリットがあります。一方で、リースバックには転リースや会計処理の問題など、いくつかの注意点もあるので詳しく解説していきます。
リースバックの転リース
転リースの定義と仕組み
転リースとは、リース会社がリース物件を第三者に再リースすることを指します。つまり、リース会社が、リースバックで取得した資産を、別の企業にリースするということです。この取引により、リース会社は安定的な収入を得ることができるでしょう。
転リースのメリットとデメリット
転リースのメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
- リース会社は、安定的な収入を得ることができる
- リースバックを行った企業は、転リースによって、リース料の負担が軽減される可能性がある
一方で、転リースのデメリットとしては、以下のようなことが考えられます。
- 転リースによって、リースバックを行った企業が、資産を使用できなくなるリスクがある
- 転リース先の企業が、リース料の支払いを滞らせた場合、リース会社の収入が不安定になる可能性がある
転リースの会計処理
リースバックの会計処理の基本
リースバックの会計処理については、国際会計基準(IFRS)※1と日本基準(J-GAAP)※2で異なる部分があります。IFRSでは、リースバックを売却処理とリース取引に分けて会計処理を行いますが、J-GAAPでは、一定の要件を満たす場合には、売却処理を行わず、引き続き資産を計上する処理が認められています。
※1国際会計基準(IFRS)とは
国際会計基準(IFRS: International Financial Reporting Standards)は、国際会計基準審議会(IASB: International Accounting Standards Board)が設定する会計基準です。IFRSは、世界各国の企業間の財務諸表の比較可能性を高めることを目的としており、現在、100以上の国と地域で採用されています。
IFRSの主な特徴としては、以下のようなことが挙げられます。
- 原則主義に基づいており、詳細なルールよりも、経済的実質を重視する
- 公正価値評価を広く採用しており、資産や負債の時価評価を重視する
- 包括利益の概念を導入しており、純資産の変動をより広く捉える
※2日本基準(J-GAAP)とは
日本基準(J-GAAP: Japanese Generally Accepted Accounting Principles)は、日本の企業会計基準委員会(ASBJ: Accounting Standards Board of Japan)が設定する会計基準です。J-GAAPは、日本の企業が財務諸表を作成する際に従うべきルールを定めたものであり、日本の会計慣行に基づいています。
J-GAAPの主な特徴としては、以下のようなことが考えられます。
- ルール主義に基づいており、詳細なルールを重視する
- 取得原価主義を基本としており、資産の取得原価を重視する
- 当期純利益の概念を重視しており、純資産の変動を狭く捉える
IFRSとJ-GAAPの主な違い
IFRSとJ-GAAPの主な違いとしては、以下のようなことが挙げられます。
項目 | IFRS | J-GAAP |
---|---|---|
基本原則 | 原則主義 | ルール主義 |
評価基準 | 公正価値評価を重視 | 取得原価主義を基本とする |
利益概念 | 包括利益を重視 | 当期純利益を重視 |
のれんの償却 | 償却を行わない | 規則的に償却を行う |
以上のように、IFRSとJ-GAAPには、基本原則や評価基準、利益概念などに違いがあります。近年、日本でもIFRSの任意適用が認められるようになったことから、今後、両基準の差異を理解することがますます重要になると思われます。企業は自社の状況に合わせて、適切な会計基準を選択し、財務諸表の作成を行う必要があると考えられます。
転リースの会計処理の注意点
転リースの会計処理においては、以下のような点に注意が必要だと思われます。
- 転リース先の企業の信用リスクを適切に評価し、貸倒引当金を計上する必要がある
- 転リースによる収入は、リース期間にわたって均等に認識する必要がある
- 転リースに関連する費用(保守費用など)は、適切に見積もり、費用計上する必要がある
以上のように、リースバックは企業にとって資金調達の手段となる一方で、転リースや会計処理の問題など、いくつかの注意点があると考えられます。特に、転リースについては、リース会社と企業双方にとってメリットとデメリットがあるため、十分な検討が必要だと推測されます。また、会計処理についても、IFRSとJ-GAAPで異なる部分があるため、企業は自社の会計基準に合わせた適切な処理を行う必要があると思われます。
リースバックを検討する際には、これらの点を踏まえ、専門家の意見を聞きながら、慎重に判断することが重要だと考えられます。
転貸とは何か
転貸の定義と仕組み
転貸とは、リース会社が、リースバックで取得した資産を、別の企業に再リースすることを指します。つまり、リース会社が、リースバックによって得た資産を、オリジナルのリース契約とは別の契約で、第三者にリースするということです。
転貸の仕組みは、以下のようになっています。
- 企業がリース会社に資産を売却し、リースバックを行う
- リース会社が、その資産を別の企業に転貸する
- 転貸先の企業が、リース会社にリース料を支払う
この仕組みにより、リース会社は、リースバックで取得した資産を有効活用し、新たな収益源を確保することができると考えられます。
転貸のメリットとデメリット
転貸には、リース会社と企業双方にとって、メリットとデメリットがあると思われます。
リース会社にとっての転貸のメリットは、以下のようなことが挙げられます。
- リースバックで取得した資産を有効活用できる
- 新たな収益源を確保できる
- リスクの分散を図ることができる
一方で、リース会社にとっての転貸のデメリットとしては、以下のようなことが考えられます。
- 転貸先の企業の信用リスクを負担しなければならない
- 転貸先の企業が、リース料の支払いを滞らせた場合、収入が不安定になる可能性がある
- 転貸に関連する事務手続きが煩雑になる
企業にとっての転貸のメリットは、以下のようなことが挙げられます。
- リースバックによって、資金調達を行うことができる
- 転貸によって、リース料の負担が軽減される可能性がある
一方で、企業にとっての転貸のデメリットとしては、以下のようなことが考えられます。
- 転貸によって、資産を使用できなくなるリスクがある
- リース会社が転貸先を適切に選定しない場合、資産の価値が毀損するリスクがある
転貸に関する注意点
転貸を行う際には、以下のような点に注意が必要です。
- 転貸先の企業の信用力を十分に審査する
- 転貸先の企業の資産の使用状況を定期的にモニタリングする
- 転貸に関する法的リスクを十分に検討する
特に、転貸先の企業の信用力の審査は重要だと考えられます。リース会社は、転貸先の企業の財務状況や事業計画を詳細に分析し、リース料の支払い能力を慎重に見極める必要があります。また、転貸先の企業の資産の使用状況についても、定期的にモニタリングを行い、資産の価値が毀損していないか確認することが大切です。
以上のように、リースバックにおける転貸には、メリットとデメリットがあり、また、注意すべき点もいくつかあります。リース会社と企業は、これらの点を十分に理解した上で、転貸の是非を慎重に判断する必要があると考えられます。特に、リース会社は、転貸先の企業の選定には細心の注意を払い、リスクを最小限に抑えるよう努めることが重要でしょう。